整形した女は幸せになっているのか

という本をこの間読んだ。北条かやさんの。
好きか嫌いかは別にして、一般的な視点で、彼女は容姿は整っていて、学歴は京大の院を出ていて頭も良い。
一件、恵まれている彼女のスペックだけれども、彼女は自殺未遂を経験している。
正直昔の私は、容姿が良かったり、学歴が良かったり、恵まれている人間が病む理由が分からなかった。なんでこんなに恵まれているのに、そのような思考回路になるのか、と理解出来なかった。
恵まれている人間よりも劣っている自己が故に、人の気持ちまで考える余裕がなかったからかもしれない。
でも、今はそんな人たちの気持ちが、少しだけ分かるような気がする。
失恋して自殺をする東大生がいれば、こんな可愛い容姿になりたいと思える子が自殺したり、スペック云々では分かり得ない心の闇がある。
性格や本質や遺伝子や環境は、整形することが不可能だ。
だから結論から言って、整形と幸せはイコールで結び付きはしないだろう。
ビューティコロシアムに出演した女性がAVに出演したのは、随分前の出来事だけれども、よく覚えている。
私は、自分に自信が出たから、一生残る映像に出ることが出来たんだな、整形して良かったなと感じた。自信のない容姿では、カメラの前に立つことも不可能だろう。
だから、私はAV女優を尊敬している。自分に出来ないことを身体をはってやっているのだから。
彼女たちは、美しいが故に背負ってしまう不幸とも、隣り合わせだ。

朝目覚めて、鏡を見て、目が二重で「これって私だっけ」と二度見をする。中学の時から使っていたアイプチを使わなくても、二重瞼の目を人工的に手に入れた。19の頃に埋没で二重にして、24で取れて、切開で二重にした、25の私。
もう、この二重は永久的なものだ。メスを入れるのも、ダウンタイムも、長い人生からしてみたら一瞬のようなものだ。
働いているキャバクラで「あの子まじ出っ歯だよねー」と酔っぱらいのオヤジが叫び出す。
私は一瞬青ざめたけど、セラミックで歯並びを治した今の私は出っ歯ではなかった、と正気にもどる。
隣にいた女の子のことだと知り、安堵すると共に、デリカシーのないオヤジに対する嫌悪感が沸く。でも、しょうがない。だって、こんな場所なんだから。
こんな世界に生まれてしまったが故に、こんなしょうもないことで悩まなければいけない。悩みたくないから、お金で解決をする。この連鎖は、いつになったらなくなるのだろう。最も強い、自分に対する嫌悪感は、いつになったらなくなるのだろう。
どんな顔になれたら、どんな性格になれたら、どんな環境になったら、どんな人生になったのならば。
失敗するリスクと、安くはない金額を苦しんで稼いで、天然の美しさには、足元にも及ばない。
それでも、少しは生きやすくなるのなら、と私は一歩前に踏み出す。
高層階から飛び降りる勇気は、酔っぱらってもない。ハプバーでマワされた帰りに、高層マンションを酔った足取りで私は探した。飛び降りたら、もしかしたら全てから解放されるのだろうか。セックスは、痛くも気持ちよくもないけど、自分をすり減らすしか、生きる方法がない。大事なものほど、すぐに壊してしまうのは何故なのだろう。
優しさの塊である人間に頭おかしいと言われた私は、もしかしたら本当に頭がおかしいのかもしれない。でも、ぶち壊して、その優しさと決別したら楽になれたから、私はこういう生き方をこれからもしていく。中途半端な優しさほど苦しいものはない。
6ヶ月続かない彼氏と、6年以上の付き合いのセフレ。
オヤジに身体を売ったら泣いてくれたことも、整形する前のが可愛いと嘘でも言ってくれたことも、私は忘れない。そんな人間を大事に出来ない私は馬鹿だ。
一方、距離感を保てるという点で、セフレとはわざわざ決別することもないだろう、と私は鼻で笑う。
会うのが明日でも、一年後でも、傷つくことはないだろう。
もっと器用だったら、もっと思いやりがあったら、もっと大事にするべきものを大事に出来たなら。
ハプバーで3Pしてるのをゲラゲラ笑いながら眺めてるセフレは美女にフェラされていて、満更でもない。私はその光景を見ても何にも思わなくて、好きな人だったら発狂していただろうな、とも思う。
でも、エロいことするよりも私は、始発待ちでラーメンを食べながら「こっちのラーメンも美味しいよ一口食べる?」とか「ラーメンの汁とご飯合うよ、やってみなよ」とかそんな会話の方が好きだな。
下半身は痛むけど、大事なものを壊して、自分を削っていく自分のが痛々しい。下半身の痛みは、時間が解決するだろう。自分と向き合うのは一生だから、痛みはこれからも伴っていく。でも、それも仕方がないことだ。
鼻を弄ったのは銀行員と上手くいかなくなってリスカしまくってからだなあ、顔もだけど性格に問題があるのは自覚しているけど、それでも顔を変えようとしないと私は生きていけない。
そして自己満足して、別の男見つけてまた自己満足して、その自己満足は長くは続かずに、別の手術をひたすら探し続ける。
もうこんなのは終わりにしたいけど、まだ生きるしかないから、一つの恋がまた終わった私は、美容外科のカウンセリングを予約するしかない。
生きることを諦めたくないから。死んだら楽だけど、死なないのならば、生きるために、生きやすい選択肢を選ぶしかない。
ダウンタイムの最も長い、輪郭削りのカウンセリングを予約して、今日を乗りきったことに安堵し、自己嫌悪の終わらない人生との決別のために、私は明日もお金を稼いでいく。